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信長の野望・30周年記念・創造
「信長の野望」シリーズの30周年記念作品としてリリースされた最新作「信長の野望・創造」(PC / PlayStation 3。以下,創造)。長きにわたって戦国シミュレーションゲームの定番であり続けている「信長の野望」シリーズだが,一方でここ最近となると,「もうお腹いっぱい」「また茶器を集めたり武将の忠誠度をチェックしては報奨金をばらまくゲームなんでしょ?」といった,ある意味で長く続いたシリーズならではの先入観がつきまとってきたのも事実だ。
さて,30周年記念にしてシリーズ最新作となる「創造」は,普段通りの「信長の野望」なのか,それともまったく新しい「信長の野望」になっているのだろうか? 本稿では,そのレビューをお届けしたい。
まずはゲームの基本要素を紹介していこう。「創造」において,プレイヤーの立場と目的は明確だ。プレイヤーは戦国大名になって,天下統一を目指す。実に文句のつけようもなく,「信長の野望」である。
ゲームはセミ・リアルタイムとでも言うべきシステムになっており,ゲーム進行そのものはリアルタイム(任意でポーズ可能)だが,1か月ごとに「評定」という会議が開催され,そこではポーズがかかった状態で内政コマンドを実行することになる。
好きなだけ内政に時間をかけられるわけだが,内政コマンドが実行できるのは評定のときだけなので,評定を終えてリアルタイムでの1か月が始まると,次の評定まで内政コマンドは実行できない。
マップの構造は専門用語でいうところの「ポイント・トゥ・ポイント」,つまり城や拠点が設置されたマスが,線でつながれた構造だ。マスとマスをつなぐ線は「道路」となっており,軍勢は必ずこの道路を通って移動することになる。
マップがカバーするのは東北から九州までの日本全国で,とくに区切りのない1枚マップとなっている。ズームアウトすれば概略図になるところまでズームアウトでき,そのままズームインしていくと城下町の様子までシームレスに見ることができる仕組みだ。
ゲームの難度は初級・中級・上級の3段階。初級モードでプレイするか,この手のゲームに慣れた人が有力な大名を選べば,最初のプレイで天下統一を果たせるだろう。プレイ時間は短く切り上げれば8時間程度,じっくりプレイしても12時間オーバーというところだろうか。
ここまでの説明でお分かりのように,当たり前ではあるが,「創造」は至って「信長の野望」である。戦国時代を舞台に,資金や兵糧をやりくりしながら,軍を養い,民心を安定させ,国を富ませて,天下統一を目指すという30年前の「信長の野望」の骨子は,そのまま生きている。無論,そこに武将の要素や,リアルタイム戦闘といった,初代になかった要素(そして歴代作の中で追加されていった要素)も備えているが,ゲームの基本は元祖「信長の野望」であると言えるだろう――つまり,ここが一番重要なことだが,プレイヤーがシリーズ作品にかける期待にはしっかり応えてくれるということだ。
では以下で細かな要素を見ていこう。
「創造」において,国家の基礎となるのは人,金,米の3つと言える。
人はその国(厳密に言えば,「創造」においては城単位で城下町が形成されるので,その「城下町」)の総人口だ。人口が多ければ多いほど,その国ができることは増えていく。街道の整備や築城など,労働者(ゲーム内では「労力」という単位で数える,一種の資源として表現されている)が必要となる事業は,基盤となる人口が多ければ多いほど,同時に並行して行えるようになる。また,人口が一定数を越えれば城下町の拡張が可能となり,より多くの富を生むようになる。拡大再生産の大きなキー,それが人口なのだ。
金は,基本的に城下町の商業施設から生み出される。土木系の内政コマンドはことごとく金を消費するし,外交活動,人材登用,軍馬や鉄砲の購入と,とにかくほとんどすべての内政コマンドを実行するためには金が必要なのだ。
金は毎月一定量貯まり,事実上,評定の間しか使用しない。そのため,毎月十分な収入があるなら,評定の間に使い切ってしまうのはひとつのやり方だ(収入がおぼつかない序盤はお薦めしない)。
米は,兵糧米である。軍勢を動かすと,兵糧があっという間に消費されていく。潜在的にどれほどの大軍を動員できようとも,それを支える兵糧がなければ意味がないのだ。
米は収穫期(9月)にしか増加しない(それ以外では,評定の間に商人から買い付けるしかない)。大規模な軍事行動を起こしたはいいが,成果をあげる前に兵糧切れで全面撤退などといった醜態を晒さぬためにも,兵糧の残量にはしっかりと目を配っておきたい。
「創造」では,その国が発生させる富は,城下町から得られるという形になっている。城下町には「石高」「商業」「兵舎」という3つの要素があり,これは順に米の収穫量,金の収益,兵士の最大数に関係してくる。この3の要素を「開発」していくことで,金や米の収量を増大させたり,あるいは動員できる兵士の数を増やしたりできるというわけだ。
また城下町はいくつかの区画に分かれており,区画ごとに開発を行っていくことになる。開発には当然ながら労力が必要なので,他の内政で労力を使ってしまい,区画開発が進められないということがあり得るので気をつけよう。それぞれの区画には,特別な施設を建設することもできる。施設の建設には多くの資金と労力を必要とするが,商業の上限値を高めたり,民の忠誠度が回復したりと,それだけの見返りがある。
城下町の区画そのものを増やすこともできる。城下町の人口が一定規模を超えるたびに,これまた結構な資金と労力を投下して区画を増やし,石高,商業,兵舎の上限を引き上げることが可能だ。「創造」では,ある武将が率いる軍勢は,ひとつの城下町から集められた兵士によって編成されるため,「大きな軍勢が動員できる城下町」を目指して拡張を行わないことには,将来的に避けられないであろう大規模な戦で不利になってしまう。
また,領地が広くなって,管理する城の数が増えると,それらすべてに対して開発コマンドを実行するのは純粋に面倒になってくる。この場合,開発を選んだあと,画面上に現れる「推奨命令」のボタンをクリックすれば,城下町ごとに最も効率のよい開発が自動的に選択される。ただし労力のことは無視して選択されるので,他の内政コマンドで労力を使いたい場合は,先にそういったコマンドを実行してしまってから「推奨命令」を選択するといいだろう。
これまで説明したとおり,城下町は「創造」における財源でありインフラなのだが,もうひとつの重要なインフラが城下町と城下町をつなぐ「道」である。
「創造」において,道は5レベルまでの格付けがなされている。レベルが高いほど街道がよく整備されているということになり,その道を通る軍勢の移動速度は早くなるし,その道がつながっている城下町は商業的なメリット(および人口増加におけるメリット)も得られる。
が,これはメリットであると同時に,リスクでもある。道は通る軍勢を選り好みはしてくれないので,よく整備された街道は,自分の軍だけでなく,敵軍もまた高速で移動してくることになるのだ。
とくに危険なのは同盟国との間の街道を整備するパターンだろう。これは同盟国からの援軍の到着を早め,また同盟国に対する援軍を出しやすくもしてくれるものの,同盟が崩壊したが最後,大量の軍勢が一気に押し寄せるセキュリティホールになりかねない。
とはいえ一般的に言えば,街道はできるかぎり整備しておくべきだ。「敵に攻められたら困る」というリスク以上のリターンが,街道にはある。街道の整備状態が悪いと,軍事面に限って見ても,「他国を攻撃しようと思ったら,国境に達するまで2か月かかりました」「自国の城が包囲されたので援軍を出したのに全然間に合わず,到着するころには兵糧が切れてあっというまに撃破されました」とかいった致命傷が多発しかねないのだ。
そして街道整備にも,やっぱり金と時間と労力が必要となる。
金は,予算規模の小さい時期には結構な重荷になるくらいの額が必要。時間は作業を監督させる武将の能力によって若干異なるが,いわゆる一流の文民で1か月未満=評定1回ぶんが必要だ。労力は,城下町の開発が労力2に対し,街道整備は労力3。これだけ投資して,1つの街道が1レベル上がるだけである。
なので,序盤では「このルートは絶対に押さえたい」という街道だけに集中して整備するといいだろう。また現実世界と同様に,まず幹線街道を作り,そこから枝分かれするような形で整備を進めると効率的だ。
ちなみに道には一般道と山岳道の2種類があり,山岳道はレベル3までしか上がらない。
上で少し触れたが,本作で街道が重要な要素となる理由のひとつに,軍勢と密接に関っているから,ということがある。
軍勢はそれぞれ腰兵糧として120日分の食料を持って出陣する。つまり,無補給でも120日間は活動できるというわけだ。が,それ以降は補給切れとなり,徐々に兵数を減らしていき,やがて消滅(離散)してしまう。
腰兵糧は,行軍中に味方ないし同盟国の城に立ち寄って補給できる(もちろんそのための兵糧の蓄えは必要だが)。長距離の行軍をするときは,中継点をどこに取るか考えたほうがいいだろう。
自国や同盟国での移動はともかく,兵糧が大きな問題になるのは,敵国に攻め込んだ場合である。敵の軍勢を野戦で撃破し,いざ城を包囲したとしても,その軍勢が城を包囲できるのは最長で4か月間。それ以上になる場合,ローテーションを組んで包囲を継続するか,さもなくば力攻めして落とすかを選択することになる。
この「ローテーションを組んで」というのが結構曲者で,ここで街道の整備状態が悪いと,現地に到着するまでに無駄な時間を使う(=無駄な兵糧を使う)ことになり,効率が悪くなってしまうのだ。
また,ローテーションの一翼を担う軍勢を自軍領地の奥深くから出陣させた場合,中継点となる城まで移動するのにも当然兵糧は消費していくわけで,自国領内の街道が整備されていないと,非常に煩わしい。
なお,「創造」にも兵種という概念は存在はする(騎馬と鉄砲)が,一般的なゲームにおける兵種とは若干扱いが異なる。「創造」では「騎馬兵ユニットを雇用する」のではなく,「軍馬を購入しておいて,出陣時にその軍勢に軍馬を与えることで,その軍勢の一部を騎馬化する」というシステムだ。鉄砲もこれと同じで,基本的には騎馬と鉄砲と歩兵という一種の諸兵連合状態で軍勢が出陣することになる。
さて,そんな苦労をして軍勢を運用するのは,敵国が同様に軍勢を持っているからであり,その軍勢を打ち破らないことには天下統一は果たせない。ということで,「創造」の合戦のシステムを見てみよう。
「創造」の合戦には2つのモードがある。1つはマップ上でリアルタイム処理される合戦,もうひとつは専用の合戦画面(とシステム)を持った会戦モードだ。
合戦が発生した場合,プレイヤーは「マップ上でそのまま処理する」か,「会戦モードに移行する」かを選択できる。詳しく説明すると,何もしなければ勝手にマップ上で解決されるが,合戦中の軍勢を選択するとボタンが出現し,これをクリックすると会戦モードに入る,という仕掛けだ。
マップ上での合戦は,とくに派手なエフェクトもなく,衝突している軍勢に発生した被害が数値で表示されるだけという,実にあっさりした演出である(武将が特殊能力を使うと,武将のセリフが小さく表示され,なにやら微妙に光ったりするが,なにせ筆者は普段カメラを引き気味でプレイするものだから……)。なんだか寂しいと思う人もいるだろうが,個人的には,簡にして要を得た演出だと感じられた。
むしろ気になるのは,城と城が道でつながっただけのマップなので,軍勢の正面衝突しか起こらず,結局は「戦争は数だよ」とか,あるいはゲームバランスによっては「戦争は指揮官(英雄)だよ」とか,そういう展開が待っているのではないか,という不安であろう。
この点,「創造」の合戦はなかなか面白い。マップが一本道で形成されていればこそ,その一本道の途中で敵軍を受け止めつつ,大きく迂回した別働隊でその背後を突き,敵軍を総崩れにさせるといったことができるのだ(それでも埋まらない数の差という状況もあるが)。
ここまで理想的な挟撃とまではいかなくても,T字路で戦闘しているところの側面を突いたりすれば,その効果は大きい。「創造」のマップは城以外にも道と道がつながっているポイントがたくさんあるので,こういった機動戦が有効なのだ。わざと整備状態の悪い道で敵軍本体を受け止め,別働隊が迂回,挟撃に気づいた敵軍が撤退を試みるも悪路に阻まれ……といった展開を狙えるのは,なかなか楽しい。
会戦モードを使うと,戦闘はもう少し詳細にプレイできる。といっても画面から受ける印象とは大きく異なり,ここも大胆な抽象化が行われている。
会戦モードでは,軍勢は前後にしか動けない。軍勢に下す移動命令は,前進・停止・後退だけなのだ。陣形も3種類だけ。残る特殊コマンドは「鉄砲隊の射撃」と「騎馬隊の突撃」だけである。
なんだか不安になってしまうかもしれないが,実はこれだけでも結構それらしく遊べるのが,まずは面白い。そして実際にはここに,武将が持つ特殊能力(武将をクリックすると発動)が加味される。特殊能力のコンボ次第では劣勢を一気に跳ね返すことも可能なので,細やかな部隊編成と,タイミングを見計らってのコンボ発動を厭わないプレイヤーであれば,このモードがオススメだ。一方「戦争は数と補給だろ?」という人であれば,このモードを封じ手にしてしまってもいい。なんにせよ,プレイヤーに選択権があるのはいいことだ。
さて,次は気になっている人も多いであろう武将について。武将の能力値は「統率」「武勇」「知略」「政治」の4種類で,さらにキャラクターの性格的なパラメータとして「主義」と「士道」がある。
能力値については,前半2つが武官向け,後半2つが文官向けの能力となる。武官向けの能力が合戦の行方に大きな影響を与えるのは言うまでもなく,また文官向けの能力は内政の効率に重大な差を生む。
とくに「創造」で注目したいのは,文民系の能力だ。というのも「創造」の内政コマンドは1か月に1回しか入力できないため,そのコマンドが達成されるまでの期間が1か月を越えてしまうと,実質2か月かかることになるからだ。例えば街道の整備であれば,28日で終わる武将であれば次の月には労力3とその武将がフリーになるが,32日かかる武将だと次の月も労力3とその武将が拘束されることになる。この差は大きい。
なにやらゲームの都合的な部分ではあるが,とはいえ「ある作業が1か月以内で終わる程度の能力」というのは,実のところかなり傑出した才能だ。戦国時代に少しでも詳しい人であればまず知っているような武将に限られるので,原則「普通は2か月かかる」と把握しておくといいだろう。
また,非常に重要な要素として,武将の「特性」がある。これは簡単に言えば特殊能力で,1人の武将は最大20種類までの特性を保有できる。なかには合戦で強烈な効果を発揮する特性もあり,状況次第ではかなりヒロイックな展開になることもある。
武将が経験を積んで成長するというのもポイント。もともと強い武将に経験を積ませてさらに突出させる(というか普通はこうなる)のもいいし,プレイヤーが個人的に思い入れが深い武将を使い込んで鍛えあげるというのも面白いだろう。
ほかにも書いておきたい要素が山積みなので,紹介していこう。
「創造」の外交は,「まだ話を聞いてくれる相手」に対して使者を送ることで関係を改善し,そうやって積み上げた「信用」を消費して援軍を要請したり,同盟を結んだりというシステムになっている。また,こちらの勢力を恐れている相手に対しては「従属せよ」と迫ることもできる。
この中でも援軍は,とくにゲーム序盤では絶大な効果を生む。序盤はどの軍勢もあまり大きな動員ができないので,軍勢の数がほぼ倍になるというのは,事実上自動的な勝利に等しい。関係を高めるための費用は決して安くないが,「どうしても勝ちたい勝利をつかむための必殺技」くらいの意識で投資しておいて損はないだろう。
もちろんゲームが中盤にさしかかったら,「同盟」によって自国の周囲にある国を“壁”にしてしまうのはとても有用な戦略だ。同盟は最長で2年間有効(その後の更新も可能)なので,2年後にどうするかまで視野に入れて組みたい。
また,同盟相手に援軍を求めることがあるように,同盟相手から援軍を求められることもある。この援軍要請にきちんと応えることで,同盟相手の心象は大きく変化する(そういったことを重視する「士道」を持った当主であれば,なおさらだ)。同盟国の窮地に対して援軍を派遣するのは,「国土の一方向の壁となってもらう」というセオリーに反するが,「この同盟相手には借りがある」と思ってくれる同盟相手であれば,「未来における時間を買う」ことになるので,なんとか義理を通したいところだ。
少し角度の違う「外交」としては,国人衆の存在がある。これはいわば「地元の勢力」で,国人衆との関係が良ければ,その国人衆がいる土地で戦うときに援軍として出現してくれる。また関係を改善する(コマンドとしては「調略」)ことで,国人衆を自国の領民として取り込んでしまうことも可能だ。
続いて「政策」という概念。これは,その大名家における大きな方針とでも言うべきものだ。政策には「楽市楽座」「検地・刀狩令」など,いかにもなものが並んでおり,それぞれ異なる効果を有する。ただしゲーム的に言うと,最も注意すべきなのは「それぞれの政策には月額の維持費が必要」ということだろう。財政的な余裕があるかどうかは必ずチェックしたい。
その上で,政策は「創造性」というパラメータと強い関係がある。創造性とは勢力ごとに存在するパラメータで,当主や家臣の「主義」,および領内にある建物などの影響によって上下する。政策は,それを実行するために必要な創造性の値の「幅」が設定されており,「高ければなんでもできる」というわけではない。つまり保守的な政策であれば,「創造性が低い」ことが必要となるのだ。
ちなみに,二条御所を含め30以上の本城を支配しているときに政策「惣無事令」を発令すると,天下はプレイヤーのものとなる。後半戦のいわゆる「地図の色塗り」が面倒なプレイヤーは,その部分をショートカット可能だ。もちろんそんな平和な手段を採用せず,敵対者を最後の一兵まで叩き潰してもいい。
次に紹介するのは「戦国伝」。これはクエスト的なもので,一種の歴史イベントなのだが,発生した段階で「このイベントをそのものをキャンセルする」という選択肢がプレイヤーに与えられる。また,途中でクエストを破棄してもペナルティはない。
この手の歴史イベントの常だが,まったく歴史を知らないプレイヤーが「なるほど,こんなことがあったのか」と楽しむというよりは,史実を知るプレイヤーが「そうそう,これがないとねー」と悦に入るというケースのほうが多いだろう。戦国伝のクリアによる効果はそこまで強烈ではないので,某社の作品にある歴史イベントのような「なんじゃこりゃあ!」と叫びたくなるような展開を迎えることも,まずない。
また,現状では,例えば「織田包囲網」の戦国伝の真っ最中に,武田家が織田家との同盟を求めてきたりもする。ええと信玄公,うちとしては願ったり叶ったりですが,いいんすかそれ……? などと思わなくもないが,逆に考えるとこれこそがセンス・オブ・ワンダーとも言える。
なお,戦国伝とは別に,「歴史イベント」も存在する。これは例えば「桶狭間」イベントが起こるとムービーシーンになって今川の軍勢が今川義元もろとも死んでいくというスーパー素敵なアレなのだが,歴史イベントは(戦国伝も)シナリオ開始前に「オフにする」選択肢があるので,こういうのは絶対にイヤだというプレイヤーはオフにしておこう。繰り返しになるが,プレイヤーに選択権があるというのは,本当に素晴らしい。
このほか,定番とも言える「名物」,金山や銀山の捜索,築城などなど,さまざまな要素を持った作品として「創造」は完成している。が,非常に基本的なところに立ち返れば,初代「信長の野望」+武将,つまり「風雲録」の頃の「信長の野望」を彷彿とさせる仕上がりになっているのではないだろうか。
いろいろと煩雑になりがちな要素を,うまく委任による自動化で省力しているのは非常に好感が持てる。ゲーム序盤であれば城の開発をどうしようか,あれこれ悩むのも楽しいが,城の数が10や20となってくれば面倒なだけだ。
また,内政がある程度のレベルで安定して,あとは合戦をどう「うまくやるか」だけということになったら,評定そのものを自動化してしまえる。このモードに入ると,プレイヤーは純粋に用兵だけに専念できる。
おおよそのプレイの進み方としては,まずは国内統一,続いて同じくらいの規模の国との戦争(この頃になると開発などを委任),大国化した数国の激突(この頃には評定を委任)という形になるだろうか。ゲームプレイの段階に応じて,プレイヤーが集中するゲーム領域を変化させる(させられる)というのは,興味深いシステムだと思う。この,「生き残れるように育てて」「性能を特化させていって」「最後は戦闘」という流れは,戦国シミュレーションとしては少し変かもしれないが,ゲームとしては面白い。
……ちなみに最終ステージに入ると,部下が勝手に地方を平定していってくれるので,それをぼーっと眺めていても天下統一できる。これはこれで,殿様らしいと言えるだろう。
個人的にちょっと気になったところを記しておくと,まずはUIだろうか。一枚マップの操作感は良好なのだが,なにぶん拡大しすぎると合戦中でもユニット群が一画面に入りきらず,かといって引くとユニットの重なりのせいで個別選択が困難になる。ユニットの個別選択ショートカットは画面左下にあるのだが,小さな顔グラフィック表示なので,「こいつ誰で,どこに送り込んだっけ?」が結構起こるのだ。人の顔を覚えられない筆者などはなおさらである。
また,軍勢を選んでから,目的地をクリックしようとしたとき,目的地までが遠いためマウスでドラッグして目的地まで画面を移動させようとすると,ユニットの選択が解除されてしまうことがあるようだ。カーソルキーで画面を移動させることで対応したが,これはちょっとストレスになった。目的地をショートカットに登録すればいいのだが,それで本当にいいのかと言われると,正直面倒だ。
UI関係ではもうひとつ,スペースバーによるショートカットが気になった。これは「ゲームを一時停止する」という,非常に便利で,なくてはならないものなのだが,評定の間にスペースバーを叩くと評定が強制終了されてしまう。このため,ショートカットが暴発して,「空白の一か月」ができることがあった。評定は非リアルタイムなので,そんなに急いで終了していただかなくとも……。
そしてこれは切実な願望なのだが,オートセーブ機能はあっていいと感じた。テンポのいいゲームなので,自分からセーブをするという意識が働きにくいのだ。筆者がプレイしていた範囲では,ゲーム中にクラッシュするようなことはなかったのだが,後半戦の詰めの部分で微妙に動作が遅くなって冷や汗をかいたことはあったので,保険としてオートセーブ機能は欲しいところだ。
欲しい機能つながりで言うと,オリジナル武将の追加だけでなく,既存の武将の能力エディットもできると,よりよかった。
この手のゲームにおける能力値レーティングは,誰がやっても,誰かが不満に思うものだ。デベロッパはデベロッパで,自分たちのポリシーにのっとり,最もゲームが楽しめるバランスを追求していると思う。そこにプライドもあるだろう。が,「自分が好きなように改造して遊べる」のは,オフライン・ゲームの大きな魅力のひとつ。そして現在,少なからぬPCゲーマーが,その楽しさを知ってしまっている。
「創造」が,戦国時代を正しくシミュレートしているか,という観点に立てば,いくらでも批判はできるだろう。だがその批判は,ゲームとしての「創造」という観点を,正しく踏まえているだろうか。
ヒストリカル・ウォーゲームは,歴史という素材を,デザイナーがどのように解釈したか,その解釈によって成り立っている。歴史そのものではなく,歴史研究書でもなく,「読者参加型の歴史小説」に近い。ゆえに,そのどこに「歴史を踏まえた面白さ」を感じるかと言われれば「なるほどこの時代は,こんな観点で解釈することが可能なんだ」という驚きだろう。
「創造」は――というか歴史ストラテジーゲームは――何よりもゲームだ。そこにどんなに優れた解釈があったとしても,遊んでいて無駄に不愉快になるゲームは,原則的に,ゲームとしてのスタートラインに立てていない。「創造」は遊んでいて楽しいし,それはゲームを評価するにあたって真っ先に評価されるべきポイントだ。
これは,以前のインタビューで,プロデューサーである小笠原賢一氏が語っていた「正しさよりも楽しさを選んだ」という「解釈の結果」でもあるだろう。
……という面倒くさい話はさておき,「創造」は「久しぶりの信長の野望」として遊ぶプレイヤーも,存分に楽しめるゲームに仕上がっているように思う。ヘルプもチュートリアルもしっかりしているので,初心者でもプレイに困ることはないだろう。「強制的な歴史イベント&ムービーなんぞいらんのじゃ!」というプレイヤーから,「姫武将とか楽しいよねー」というプレイヤーまで,きちんと「信長の野望」を楽しませてくれる作品である。
さて,30周年記念にしてシリーズ最新作となる「創造」は,普段通りの「信長の野望」なのか,それともまったく新しい「信長の野望」になっているのだろうか? 本稿では,そのレビューをお届けしたい。
目指すはもちろん天下統一
まずはゲームの基本要素を紹介していこう。「創造」において,プレイヤーの立場と目的は明確だ。プレイヤーは戦国大名になって,天下統一を目指す。実に文句のつけようもなく,「信長の野望」である。
ゲームはセミ・リアルタイムとでも言うべきシステムになっており,ゲーム進行そのものはリアルタイム(任意でポーズ可能)だが,1か月ごとに「評定」という会議が開催され,そこではポーズがかかった状態で内政コマンドを実行することになる。
好きなだけ内政に時間をかけられるわけだが,内政コマンドが実行できるのは評定のときだけなので,評定を終えてリアルタイムでの1か月が始まると,次の評定まで内政コマンドは実行できない。
マップの構造は専門用語でいうところの「ポイント・トゥ・ポイント」,つまり城や拠点が設置されたマスが,線でつながれた構造だ。マスとマスをつなぐ線は「道路」となっており,軍勢は必ずこの道路を通って移動することになる。
マップがカバーするのは東北から九州までの日本全国で,とくに区切りのない1枚マップとなっている。ズームアウトすれば概略図になるところまでズームアウトでき,そのままズームインしていくと城下町の様子までシームレスに見ることができる仕組みだ。
ゲームの難度は初級・中級・上級の3段階。初級モードでプレイするか,この手のゲームに慣れた人が有力な大名を選べば,最初のプレイで天下統一を果たせるだろう。プレイ時間は短く切り上げれば8時間程度,じっくりプレイしても12時間オーバーというところだろうか。
ここまでの説明でお分かりのように,当たり前ではあるが,「創造」は至って「信長の野望」である。戦国時代を舞台に,資金や兵糧をやりくりしながら,軍を養い,民心を安定させ,国を富ませて,天下統一を目指すという30年前の「信長の野望」の骨子は,そのまま生きている。無論,そこに武将の要素や,リアルタイム戦闘といった,初代になかった要素(そして歴代作の中で追加されていった要素)も備えているが,ゲームの基本は元祖「信長の野望」であると言えるだろう――つまり,ここが一番重要なことだが,プレイヤーがシリーズ作品にかける期待にはしっかり応えてくれるということだ。
では以下で細かな要素を見ていこう。
国家の基礎は人・金・米
「創造」において,国家の基礎となるのは人,金,米の3つと言える。
人はその国(厳密に言えば,「創造」においては城単位で城下町が形成されるので,その「城下町」)の総人口だ。人口が多ければ多いほど,その国ができることは増えていく。街道の整備や築城など,労働者(ゲーム内では「労力」という単位で数える,一種の資源として表現されている)が必要となる事業は,基盤となる人口が多ければ多いほど,同時に並行して行えるようになる。また,人口が一定数を越えれば城下町の拡張が可能となり,より多くの富を生むようになる。拡大再生産の大きなキー,それが人口なのだ。
金は,基本的に城下町の商業施設から生み出される。土木系の内政コマンドはことごとく金を消費するし,外交活動,人材登用,軍馬や鉄砲の購入と,とにかくほとんどすべての内政コマンドを実行するためには金が必要なのだ。
金は毎月一定量貯まり,事実上,評定の間しか使用しない。そのため,毎月十分な収入があるなら,評定の間に使い切ってしまうのはひとつのやり方だ(収入がおぼつかない序盤はお薦めしない)。
米は,兵糧米である。軍勢を動かすと,兵糧があっという間に消費されていく。潜在的にどれほどの大軍を動員できようとも,それを支える兵糧がなければ意味がないのだ。
米は収穫期(9月)にしか増加しない(それ以外では,評定の間に商人から買い付けるしかない)。大規模な軍事行動を起こしたはいいが,成果をあげる前に兵糧切れで全面撤退などといった醜態を晒さぬためにも,兵糧の残量にはしっかりと目を配っておきたい。
国を富ませるには
「創造」では,その国が発生させる富は,城下町から得られるという形になっている。城下町には「石高」「商業」「兵舎」という3つの要素があり,これは順に米の収穫量,金の収益,兵士の最大数に関係してくる。この3の要素を「開発」していくことで,金や米の収量を増大させたり,あるいは動員できる兵士の数を増やしたりできるというわけだ。
また城下町はいくつかの区画に分かれており,区画ごとに開発を行っていくことになる。開発には当然ながら労力が必要なので,他の内政で労力を使ってしまい,区画開発が進められないということがあり得るので気をつけよう。それぞれの区画には,特別な施設を建設することもできる。施設の建設には多くの資金と労力を必要とするが,商業の上限値を高めたり,民の忠誠度が回復したりと,それだけの見返りがある。
城下町の区画そのものを増やすこともできる。城下町の人口が一定規模を超えるたびに,これまた結構な資金と労力を投下して区画を増やし,石高,商業,兵舎の上限を引き上げることが可能だ。「創造」では,ある武将が率いる軍勢は,ひとつの城下町から集められた兵士によって編成されるため,「大きな軍勢が動員できる城下町」を目指して拡張を行わないことには,将来的に避けられないであろう大規模な戦で不利になってしまう。
また,領地が広くなって,管理する城の数が増えると,それらすべてに対して開発コマンドを実行するのは純粋に面倒になってくる。この場合,開発を選んだあと,画面上に現れる「推奨命令」のボタンをクリックすれば,城下町ごとに最も効率のよい開発が自動的に選択される。ただし労力のことは無視して選択されるので,他の内政コマンドで労力を使いたい場合は,先にそういったコマンドを実行してしまってから「推奨命令」を選択するといいだろう。
街道のジレンマ
これまで説明したとおり,城下町は「創造」における財源でありインフラなのだが,もうひとつの重要なインフラが城下町と城下町をつなぐ「道」である。
「創造」において,道は5レベルまでの格付けがなされている。レベルが高いほど街道がよく整備されているということになり,その道を通る軍勢の移動速度は早くなるし,その道がつながっている城下町は商業的なメリット(および人口増加におけるメリット)も得られる。
が,これはメリットであると同時に,リスクでもある。道は通る軍勢を選り好みはしてくれないので,よく整備された街道は,自分の軍だけでなく,敵軍もまた高速で移動してくることになるのだ。
とくに危険なのは同盟国との間の街道を整備するパターンだろう。これは同盟国からの援軍の到着を早め,また同盟国に対する援軍を出しやすくもしてくれるものの,同盟が崩壊したが最後,大量の軍勢が一気に押し寄せるセキュリティホールになりかねない。
とはいえ一般的に言えば,街道はできるかぎり整備しておくべきだ。「敵に攻められたら困る」というリスク以上のリターンが,街道にはある。街道の整備状態が悪いと,軍事面に限って見ても,「他国を攻撃しようと思ったら,国境に達するまで2か月かかりました」「自国の城が包囲されたので援軍を出したのに全然間に合わず,到着するころには兵糧が切れてあっというまに撃破されました」とかいった致命傷が多発しかねないのだ。
そして街道整備にも,やっぱり金と時間と労力が必要となる。
金は,予算規模の小さい時期には結構な重荷になるくらいの額が必要。時間は作業を監督させる武将の能力によって若干異なるが,いわゆる一流の文民で1か月未満=評定1回ぶんが必要だ。労力は,城下町の開発が労力2に対し,街道整備は労力3。これだけ投資して,1つの街道が1レベル上がるだけである。
なので,序盤では「このルートは絶対に押さえたい」という街道だけに集中して整備するといいだろう。また現実世界と同様に,まず幹線街道を作り,そこから枝分かれするような形で整備を進めると効率的だ。
ちなみに道には一般道と山岳道の2種類があり,山岳道はレベル3までしか上がらない。
軍勢の“寿命”は約4か月
上で少し触れたが,本作で街道が重要な要素となる理由のひとつに,軍勢と密接に関っているから,ということがある。
軍勢はそれぞれ腰兵糧として120日分の食料を持って出陣する。つまり,無補給でも120日間は活動できるというわけだ。が,それ以降は補給切れとなり,徐々に兵数を減らしていき,やがて消滅(離散)してしまう。
腰兵糧は,行軍中に味方ないし同盟国の城に立ち寄って補給できる(もちろんそのための兵糧の蓄えは必要だが)。長距離の行軍をするときは,中継点をどこに取るか考えたほうがいいだろう。
自国や同盟国での移動はともかく,兵糧が大きな問題になるのは,敵国に攻め込んだ場合である。敵の軍勢を野戦で撃破し,いざ城を包囲したとしても,その軍勢が城を包囲できるのは最長で4か月間。それ以上になる場合,ローテーションを組んで包囲を継続するか,さもなくば力攻めして落とすかを選択することになる。
この「ローテーションを組んで」というのが結構曲者で,ここで街道の整備状態が悪いと,現地に到着するまでに無駄な時間を使う(=無駄な兵糧を使う)ことになり,効率が悪くなってしまうのだ。
また,ローテーションの一翼を担う軍勢を自軍領地の奥深くから出陣させた場合,中継点となる城まで移動するのにも当然兵糧は消費していくわけで,自国領内の街道が整備されていないと,非常に煩わしい。
なお,「創造」にも兵種という概念は存在はする(騎馬と鉄砲)が,一般的なゲームにおける兵種とは若干扱いが異なる。「創造」では「騎馬兵ユニットを雇用する」のではなく,「軍馬を購入しておいて,出陣時にその軍勢に軍馬を与えることで,その軍勢の一部を騎馬化する」というシステムだ。鉄砲もこれと同じで,基本的には騎馬と鉄砲と歩兵という一種の諸兵連合状態で軍勢が出陣することになる。
巧みな抽象化がなされた合戦
さて,そんな苦労をして軍勢を運用するのは,敵国が同様に軍勢を持っているからであり,その軍勢を打ち破らないことには天下統一は果たせない。ということで,「創造」の合戦のシステムを見てみよう。
「創造」の合戦には2つのモードがある。1つはマップ上でリアルタイム処理される合戦,もうひとつは専用の合戦画面(とシステム)を持った会戦モードだ。
合戦が発生した場合,プレイヤーは「マップ上でそのまま処理する」か,「会戦モードに移行する」かを選択できる。詳しく説明すると,何もしなければ勝手にマップ上で解決されるが,合戦中の軍勢を選択するとボタンが出現し,これをクリックすると会戦モードに入る,という仕掛けだ。
マップ上での合戦は,とくに派手なエフェクトもなく,衝突している軍勢に発生した被害が数値で表示されるだけという,実にあっさりした演出である(武将が特殊能力を使うと,武将のセリフが小さく表示され,なにやら微妙に光ったりするが,なにせ筆者は普段カメラを引き気味でプレイするものだから……)。なんだか寂しいと思う人もいるだろうが,個人的には,簡にして要を得た演出だと感じられた。
むしろ気になるのは,城と城が道でつながっただけのマップなので,軍勢の正面衝突しか起こらず,結局は「戦争は数だよ」とか,あるいはゲームバランスによっては「戦争は指揮官(英雄)だよ」とか,そういう展開が待っているのではないか,という不安であろう。
この点,「創造」の合戦はなかなか面白い。マップが一本道で形成されていればこそ,その一本道の途中で敵軍を受け止めつつ,大きく迂回した別働隊でその背後を突き,敵軍を総崩れにさせるといったことができるのだ(それでも埋まらない数の差という状況もあるが)。
ここまで理想的な挟撃とまではいかなくても,T字路で戦闘しているところの側面を突いたりすれば,その効果は大きい。「創造」のマップは城以外にも道と道がつながっているポイントがたくさんあるので,こういった機動戦が有効なのだ。わざと整備状態の悪い道で敵軍本体を受け止め,別働隊が迂回,挟撃に気づいた敵軍が撤退を試みるも悪路に阻まれ……といった展開を狙えるのは,なかなか楽しい。
会戦モードを使うと,戦闘はもう少し詳細にプレイできる。といっても画面から受ける印象とは大きく異なり,ここも大胆な抽象化が行われている。
会戦モードでは,軍勢は前後にしか動けない。軍勢に下す移動命令は,前進・停止・後退だけなのだ。陣形も3種類だけ。残る特殊コマンドは「鉄砲隊の射撃」と「騎馬隊の突撃」だけである。
なんだか不安になってしまうかもしれないが,実はこれだけでも結構それらしく遊べるのが,まずは面白い。そして実際にはここに,武将が持つ特殊能力(武将をクリックすると発動)が加味される。特殊能力のコンボ次第では劣勢を一気に跳ね返すことも可能なので,細やかな部隊編成と,タイミングを見計らってのコンボ発動を厭わないプレイヤーであれば,このモードがオススメだ。一方「戦争は数と補給だろ?」という人であれば,このモードを封じ手にしてしまってもいい。なんにせよ,プレイヤーに選択権があるのはいいことだ。
ヒロイックな武将システム
さて,次は気になっている人も多いであろう武将について。武将の能力値は「統率」「武勇」「知略」「政治」の4種類で,さらにキャラクターの性格的なパラメータとして「主義」と「士道」がある。
能力値については,前半2つが武官向け,後半2つが文官向けの能力となる。武官向けの能力が合戦の行方に大きな影響を与えるのは言うまでもなく,また文官向けの能力は内政の効率に重大な差を生む。
とくに「創造」で注目したいのは,文民系の能力だ。というのも「創造」の内政コマンドは1か月に1回しか入力できないため,そのコマンドが達成されるまでの期間が1か月を越えてしまうと,実質2か月かかることになるからだ。例えば街道の整備であれば,28日で終わる武将であれば次の月には労力3とその武将がフリーになるが,32日かかる武将だと次の月も労力3とその武将が拘束されることになる。この差は大きい。
なにやらゲームの都合的な部分ではあるが,とはいえ「ある作業が1か月以内で終わる程度の能力」というのは,実のところかなり傑出した才能だ。戦国時代に少しでも詳しい人であればまず知っているような武将に限られるので,原則「普通は2か月かかる」と把握しておくといいだろう。
また,非常に重要な要素として,武将の「特性」がある。これは簡単に言えば特殊能力で,1人の武将は最大20種類までの特性を保有できる。なかには合戦で強烈な効果を発揮する特性もあり,状況次第ではかなりヒロイックな展開になることもある。
武将が経験を積んで成長するというのもポイント。もともと強い武将に経験を積ませてさらに突出させる(というか普通はこうなる)のもいいし,プレイヤーが個人的に思い入れが深い武将を使い込んで鍛えあげるというのも面白いだろう。
外交,国人衆,政策,戦国伝……多彩な要素が気持ちを高めてくれる
ほかにも書いておきたい要素が山積みなので,紹介していこう。
「創造」の外交は,「まだ話を聞いてくれる相手」に対して使者を送ることで関係を改善し,そうやって積み上げた「信用」を消費して援軍を要請したり,同盟を結んだりというシステムになっている。また,こちらの勢力を恐れている相手に対しては「従属せよ」と迫ることもできる。
この中でも援軍は,とくにゲーム序盤では絶大な効果を生む。序盤はどの軍勢もあまり大きな動員ができないので,軍勢の数がほぼ倍になるというのは,事実上自動的な勝利に等しい。関係を高めるための費用は決して安くないが,「どうしても勝ちたい勝利をつかむための必殺技」くらいの意識で投資しておいて損はないだろう。
もちろんゲームが中盤にさしかかったら,「同盟」によって自国の周囲にある国を“壁”にしてしまうのはとても有用な戦略だ。同盟は最長で2年間有効(その後の更新も可能)なので,2年後にどうするかまで視野に入れて組みたい。
また,同盟相手に援軍を求めることがあるように,同盟相手から援軍を求められることもある。この援軍要請にきちんと応えることで,同盟相手の心象は大きく変化する(そういったことを重視する「士道」を持った当主であれば,なおさらだ)。同盟国の窮地に対して援軍を派遣するのは,「国土の一方向の壁となってもらう」というセオリーに反するが,「この同盟相手には借りがある」と思ってくれる同盟相手であれば,「未来における時間を買う」ことになるので,なんとか義理を通したいところだ。
少し角度の違う「外交」としては,国人衆の存在がある。これはいわば「地元の勢力」で,国人衆との関係が良ければ,その国人衆がいる土地で戦うときに援軍として出現してくれる。また関係を改善する(コマンドとしては「調略」)ことで,国人衆を自国の領民として取り込んでしまうことも可能だ。
続いて「政策」という概念。これは,その大名家における大きな方針とでも言うべきものだ。政策には「楽市楽座」「検地・刀狩令」など,いかにもなものが並んでおり,それぞれ異なる効果を有する。ただしゲーム的に言うと,最も注意すべきなのは「それぞれの政策には月額の維持費が必要」ということだろう。財政的な余裕があるかどうかは必ずチェックしたい。
その上で,政策は「創造性」というパラメータと強い関係がある。創造性とは勢力ごとに存在するパラメータで,当主や家臣の「主義」,および領内にある建物などの影響によって上下する。政策は,それを実行するために必要な創造性の値の「幅」が設定されており,「高ければなんでもできる」というわけではない。つまり保守的な政策であれば,「創造性が低い」ことが必要となるのだ。
ちなみに,二条御所を含め30以上の本城を支配しているときに政策「惣無事令」を発令すると,天下はプレイヤーのものとなる。後半戦のいわゆる「地図の色塗り」が面倒なプレイヤーは,その部分をショートカット可能だ。もちろんそんな平和な手段を採用せず,敵対者を最後の一兵まで叩き潰してもいい。
次に紹介するのは「戦国伝」。これはクエスト的なもので,一種の歴史イベントなのだが,発生した段階で「このイベントをそのものをキャンセルする」という選択肢がプレイヤーに与えられる。また,途中でクエストを破棄してもペナルティはない。
この手の歴史イベントの常だが,まったく歴史を知らないプレイヤーが「なるほど,こんなことがあったのか」と楽しむというよりは,史実を知るプレイヤーが「そうそう,これがないとねー」と悦に入るというケースのほうが多いだろう。戦国伝のクリアによる効果はそこまで強烈ではないので,某社の作品にある歴史イベントのような「なんじゃこりゃあ!」と叫びたくなるような展開を迎えることも,まずない。
また,現状では,例えば「織田包囲網」の戦国伝の真っ最中に,武田家が織田家との同盟を求めてきたりもする。ええと信玄公,うちとしては願ったり叶ったりですが,いいんすかそれ……? などと思わなくもないが,逆に考えるとこれこそがセンス・オブ・ワンダーとも言える。
なお,戦国伝とは別に,「歴史イベント」も存在する。これは例えば「桶狭間」イベントが起こるとムービーシーンになって今川の軍勢が今川義元もろとも死んでいくというスーパー素敵なアレなのだが,歴史イベントは(戦国伝も)シナリオ開始前に「オフにする」選択肢があるので,こういうのは絶対にイヤだというプレイヤーはオフにしておこう。繰り返しになるが,プレイヤーに選択権があるというのは,本当に素晴らしい。
正しさよりも,楽しさを
このほか,定番とも言える「名物」,金山や銀山の捜索,築城などなど,さまざまな要素を持った作品として「創造」は完成している。が,非常に基本的なところに立ち返れば,初代「信長の野望」+武将,つまり「風雲録」の頃の「信長の野望」を彷彿とさせる仕上がりになっているのではないだろうか。
いろいろと煩雑になりがちな要素を,うまく委任による自動化で省力しているのは非常に好感が持てる。ゲーム序盤であれば城の開発をどうしようか,あれこれ悩むのも楽しいが,城の数が10や20となってくれば面倒なだけだ。
また,内政がある程度のレベルで安定して,あとは合戦をどう「うまくやるか」だけということになったら,評定そのものを自動化してしまえる。このモードに入ると,プレイヤーは純粋に用兵だけに専念できる。
おおよそのプレイの進み方としては,まずは国内統一,続いて同じくらいの規模の国との戦争(この頃になると開発などを委任),大国化した数国の激突(この頃には評定を委任)という形になるだろうか。ゲームプレイの段階に応じて,プレイヤーが集中するゲーム領域を変化させる(させられる)というのは,興味深いシステムだと思う。この,「生き残れるように育てて」「性能を特化させていって」「最後は戦闘」という流れは,戦国シミュレーションとしては少し変かもしれないが,ゲームとしては面白い。
……ちなみに最終ステージに入ると,部下が勝手に地方を平定していってくれるので,それをぼーっと眺めていても天下統一できる。これはこれで,殿様らしいと言えるだろう。
個人的にちょっと気になったところを記しておくと,まずはUIだろうか。一枚マップの操作感は良好なのだが,なにぶん拡大しすぎると合戦中でもユニット群が一画面に入りきらず,かといって引くとユニットの重なりのせいで個別選択が困難になる。ユニットの個別選択ショートカットは画面左下にあるのだが,小さな顔グラフィック表示なので,「こいつ誰で,どこに送り込んだっけ?」が結構起こるのだ。人の顔を覚えられない筆者などはなおさらである。
また,軍勢を選んでから,目的地をクリックしようとしたとき,目的地までが遠いためマウスでドラッグして目的地まで画面を移動させようとすると,ユニットの選択が解除されてしまうことがあるようだ。カーソルキーで画面を移動させることで対応したが,これはちょっとストレスになった。目的地をショートカットに登録すればいいのだが,それで本当にいいのかと言われると,正直面倒だ。
UI関係ではもうひとつ,スペースバーによるショートカットが気になった。これは「ゲームを一時停止する」という,非常に便利で,なくてはならないものなのだが,評定の間にスペースバーを叩くと評定が強制終了されてしまう。このため,ショートカットが暴発して,「空白の一か月」ができることがあった。評定は非リアルタイムなので,そんなに急いで終了していただかなくとも……。
そしてこれは切実な願望なのだが,オートセーブ機能はあっていいと感じた。テンポのいいゲームなので,自分からセーブをするという意識が働きにくいのだ。筆者がプレイしていた範囲では,ゲーム中にクラッシュするようなことはなかったのだが,後半戦の詰めの部分で微妙に動作が遅くなって冷や汗をかいたことはあったので,保険としてオートセーブ機能は欲しいところだ。
欲しい機能つながりで言うと,オリジナル武将の追加だけでなく,既存の武将の能力エディットもできると,よりよかった。
この手のゲームにおける能力値レーティングは,誰がやっても,誰かが不満に思うものだ。デベロッパはデベロッパで,自分たちのポリシーにのっとり,最もゲームが楽しめるバランスを追求していると思う。そこにプライドもあるだろう。が,「自分が好きなように改造して遊べる」のは,オフライン・ゲームの大きな魅力のひとつ。そして現在,少なからぬPCゲーマーが,その楽しさを知ってしまっている。
「創造」が,戦国時代を正しくシミュレートしているか,という観点に立てば,いくらでも批判はできるだろう。だがその批判は,ゲームとしての「創造」という観点を,正しく踏まえているだろうか。
ヒストリカル・ウォーゲームは,歴史という素材を,デザイナーがどのように解釈したか,その解釈によって成り立っている。歴史そのものではなく,歴史研究書でもなく,「読者参加型の歴史小説」に近い。ゆえに,そのどこに「歴史を踏まえた面白さ」を感じるかと言われれば「なるほどこの時代は,こんな観点で解釈することが可能なんだ」という驚きだろう。
「創造」は――というか歴史ストラテジーゲームは――何よりもゲームだ。そこにどんなに優れた解釈があったとしても,遊んでいて無駄に不愉快になるゲームは,原則的に,ゲームとしてのスタートラインに立てていない。「創造」は遊んでいて楽しいし,それはゲームを評価するにあたって真っ先に評価されるべきポイントだ。
これは,以前のインタビューで,プロデューサーである小笠原賢一氏が語っていた「正しさよりも楽しさを選んだ」という「解釈の結果」でもあるだろう。
……という面倒くさい話はさておき,「創造」は「久しぶりの信長の野望」として遊ぶプレイヤーも,存分に楽しめるゲームに仕上がっているように思う。ヘルプもチュートリアルもしっかりしているので,初心者でもプレイに困ることはないだろう。「強制的な歴史イベント&ムービーなんぞいらんのじゃ!」というプレイヤーから,「姫武将とか楽しいよねー」というプレイヤーまで,きちんと「信長の野望」を楽しませてくれる作品である。